【内部統制ラボ #032】広義の不備が発覚した場合の対応

今回の主な内容

  • 不正等が発覚した場合に、まず確認すべき財務諸表への影響
  • 調査を実施する部署とJ-SOX評価部門の役割分担
  • 調査結果を踏まえたJ-SOX上の不備の評価と是正
  • 「内部統制の固有の限界」と不正・内部統制の不備との関係

広義の不備が発覚した場合の対応

資産の不正流用や財務諸表不正など、財務諸表に影響を及ぼす可能性のある不正が発覚した場合、まず確認すべきなのは財務諸表への影響額です。

不正が発覚した部署の担当者や上席者に対して、どのような取引で不正が発生したのか、発生期間、金額、原因などを確認します。この際、ヒアリングだけで調査を終わらせるのではなく、回答を裏付ける証憑、会計データ、承認記録などを入手し、回答内容との整合性を確認することが重要です。さらに、同様の不正が他の取引、拠点、部門、子会社などで発生していないかについても検討する必要があります。そのためには、拠点別・担当者別・取引先別の金額や比率の比較、棚卸資産や債権債務の回転期間の分析など、データを利用した分析的な手続も有効です。必要に応じて、グループ会社や事業部を対象としたアンケート調査などを組み合わせ、事象の全容を把握していきます。

調査とJ-SOX評価の役割分担

こうした調査をどの部署が担当するかは、会社の組織規程や職務分掌によって異なります。

財務諸表に直接影響する事象であれば、親会社の経理部門が中心となって調査するケースが考えられます。一方で、経理部門の調査が、J-SOXにおける内部統制の不備の評価や是正確認まで及ぶとは限りません。そのため、J-SOXへの影響を評価するという観点では、J-SOX評価部門が対応を引き継ぐ必要があります。 経理部門とJ-SOX評価部門の間で、役割分担や情報共有について十分にコミュニケーションを図ることが重要です。

J-SOX上の不備としての評価

調査の結果、財務諸表への影響金額が把握された後は、その結果をもとにJ-SOX上の不備の影響金額を算定し、重要性を評価します。そのうえで、是正・改善方針を含めて、経営者、監査役等、監査法人などへの報告を行います。

J-SOXでは期末日が評価基準日であるため、期中に発覚した不備について、期末までに是正が完了すれば「期末日時点では不備ではなく、評価結果に影響を与えない」という整理になります。一方、財務諸表への影響が既に生じていた場合には、期中に発覚した事象であっても、その影響金額を把握したうえで、不備としての影響を検討することが実務上必要になると考えます。

不正と「内部統制の固有の限界」

不正については、「共謀」や「経営者による内部統制の無視・無効化」といった内部統制の固有の限界があるため、内部統制上の不備とは別の問題ではないか、という疑問を持つことも考えられます。しかし、内部統制に固有の限界があることと、「内部統制の不備ではない」ことは同義ではありません。例えば、現金横領が発生した際に記帳と出納が分離されておらず、上席者による検証も行われていなかった場合や、経費の不正流用が生じた際に発注と検収の職務分離や請求書の検証体制が不十分であった場合など、通常の内部統制を適切に整備・運用していれば、防止または発見できたと考えられる事象もあります。

個別の事象について最終的にどのようにJ-SOX上で取り扱うかは、会社および監査法人との協議・判断によるところがあります。

今回は、広義の内部統制の不備が発覚した際の調査、役割分担、J-SOX評価、不正と内部統制の関係について、Podcastで詳しく解説しています。

上記のプレーヤーからお聴きいただけます。

次回について

次回は、「期末に不備が残ってしまった場合の対応」について解説します。